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 隣のあの娘の御祝いよ。結婚パアティならぬ結婚祝賀旅行!
我等が勤める会社の 同僚も、あの娘の友人も、あたしの彼の友人も沢山。
総員数十名で、暖かい島へと降り立った。多分、海の綺麗な場所なんだ。
オレンヂ色のかがり火に照らされ乍、煙に塗れて肉を焼き酒を飲み歌い騒ぎ…
夜が明けた。一部二日酔いに苛まれている者を除き、朝は海へと遊びに来たの。
昨夜飲みの席で、誰かが囃し立てた。

「次は御前等やね!」

あたしと、あたしの愛しい人 此の2人を順に見詰めた誰かが云った。
女は(あたしは)、殿方の思う儘 急かさず拒まずうちの人の意に沿いたいのです。
だからハイッともまさかとも云えずに少し離れた席で騒いでいる愛しい人へと視線を送る。
そしたら、「いやあ…」 と、彼は首を傾けた。
解っている。未だ互いにすべき事が沢山在る事。中身は餓鬼なんだ。
馴れ合いなら兎も角、恐ろしい。家庭等築けない。子等持っての他抱けない。
しかし冗談でも… 「えぇ此れに便乗して今直ぐにでも!」 そう云って
皆の前で肩を抱いて下さったって好いじゃない。 …なんて。
海風が眼をジーンとさせる気がして、
大きくつばの縁取られている帽子を両手で沈ませ深くかぶり直そうとした。
自分の心の中に、疚しい物さえ渦巻いている気がした。
袖無しの真白いワンピイヰスも、あたしには酷く似合わない。
其の場に膝を付いて浜砂を 自分の白を汚す如く胸元へと塗り付けてみる。
でもさらさらとした砂は少し纏わり付いて直ぐに浜地へと帰ってしまうだけ。
穢れない胸元をぎゅっと握ったら、其の手を誰かに強く引かれてしまう。

「向うにある島、 見えるか?」

愛しい貴方。涙等零れない。唯、気持ちを取り直し疚しい物を払うのみ。
知ってか知らないでか、何時もあたしの手を引いて無理にでも立ち上らせるのね。
とても助かるの。此の弱い視力で何処迄見えよう。 先の島なんて見えない。
彼も目が悪い筈なのに、 …如何して 彼には見えるのでしょうね。
見えないなら泳いでそんで近く迄行こう って貴方。
ワンピヰス姿の儘、海の方へと手を引かれた。

「あたし、泳げないよ。」

「俺が居る。」

そうですね、…恐れる事等何も無い。
どれ位、離れているのかは解らないけれど、 でも先に在るらしい島へと向かう。
泳いで向かう。まあ、あたしは、泳ぎ進む彼にしがみ付いているだけなんだけれど。
ふと 彼がもし溺れてしまったら と考える。頼り切ってはいけないのだ。
解っている。無理にでもあたしが泳いで、あの島へと彼を連れて行かねばならぬ事。
何とかなると妙な自信だけは在った。25m …いや、50mしか泳げないクセに。

「あまり遠くへ行くなよ。」 背後で、誰かが我等に宛てた言葉へは 大丈夫だと告げる。
もう随分深い所迄来てしまった。島が見えてきたよ。見えただけじゃ駄目だってさ。
到着しなければならないんだって。 疲れたでしょ? とあたし。
案の定、全然 と強がる彼。泳ぐ途中途中に休憩所の様な水に浮かぶシヰトが在る。
其れなのに一度だって止まらず、箇所箇所を通過していくあたし達。

「ねえ御願い。キスをして。」 と、 あたしが急に笑うと 彼は其れに応える。
泳ぐ事も止めずに一度だけ応えてくれる。海水の味。幸福だと感じる。
やがて事故も無く島に到着したら 柵越しに動物たちが迎えてくれた。
アルパカと目が合った。他の動物は何も見えない。アルパカが笑っている。
あれが噂のアルパカだよ!貴方見た事無いでしょ! あたしがはしゃいだら…
また直ぐ元着た島へと戻る準備をしている貴方。此処は次の観光地。
御昼になれば皆もヨットになって此処へ来るのに! 全く忙しないねえ。
でも、そんな貴方のペヱスこそがあたしの総てなのです。
さあ戻りましょうか。次はあたしが泳ごう。黙って掴まってなさい。

25mしか泳げないけどね!

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